平安期の2時間ドラマ「銚子娘道成寺」エピローグ編(もう一人の晴明)
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「欲深で計算高い主水は、突然、高熱を発して、床に伏し、 やがて、延命姫に許しを乞うようにしながら、悶絶死する。
一方、延命姫の死体は魚に食い散らされながらも、 櫛と歯だけが外洋に面した川口の河口付近に漂着する。やがて・・ 」
ここまで書いて、晴明は「ふぅ」とため息をついて、 一服の休息をとった。
茶を運んできた、真福寺の住職が問うた。
シナリオ作りのお手伝いをしていたからである。
「これでは、晴明さまの人格を落としめることになりませんか?」
「それでもよい。あくまでも、儂は脇役で、 主役は延命姫じゃからの。脇役は、悪人でも構わないのだよ。」
「さすが、晴明さま!。して、晴明役はどうされますか?まさか、 晴明さまご自身がされるわけにはいかないでしょう。」
と言いながら立ち上がって、外へ出ようとする。
「晴明さま、どちらへ?」
「境内の桜を見に行く。帝の憾気も、やがて解ける。京の都・ 大坂に帰れる日も近いだろう。・・・おぉ、そうだ。帰る途中、 紀州にシナリオを残しておこう。芸事の盛んな大坂で、 もっと良いシナリオにしてくれるかもしれない。」
(なお、この部分の記事はフィクションであり、登場人物、 団体等には、一切関係ありません。)